オウム貝
「……思えば、事故の前日にご一緒したあの夕食が、お二人をお招きしたあの宴が、ご夫妻との永遠のお別れになってしまいました。それにしても、あの時、猫がいたずらして食器が床に落ちましたね。柔らかな絨毯の上に落ちたのに、ほかの食器は何も傷ついたりしなかったのに、お二人の箸置きだけが真っ二つに割れてしまったのは何故だったんでしょう……」
参列者の間に、さざ波のように動揺が広がるのが見えました。「妙なことを言うなよってなあ」。誰かが小声でつぶやいたのが聞こえました。それを待っていたかのように、祭壇を埋めていた花束がざざーっと雪崩れ落ちたんです。「ヒッ」。何人かが息を呑んだのがわかりました。
「きっと思い残したことがあるのね」…… 何気なく口にした言葉で自分自身が怖くなってしまったのでしょう、女性参列者の一人がぶるっと震えました。
昔、ほんとにこんなお葬式がありました。なんだか思い出したのは、お盆も近いからでしょうか。
| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)



最近のコメント